<番外編>【君の膵臓をたべたい】は何を伝えようとしているのか?②〜そして、山内桜良へ捧ぐ〜


<<コメディー作品と言っても過言ではないポップな展開>>

 

共病文庫をきっかけに出会った彼と桜良。

この小説の何が面白いって、場面転換、会話のテンポが実に面白いのだ。


物語的には

①焼肉(ちょっと高級店)食べ放題に行く。その後、自殺用のロープを買いに行く。

②デザートパラダイス(スイーツパラダイス的な)の食べ放題。

③某県へのお泊まり旅行


とまぁ、前半はこんな感じで場面が動いていく。

ここで気づかないだろうか??実はこの行く先々の展開って

こういうタイプの小説にはあまりない気がする。


例えば、これが、夜景の見えるレストランだとか、

渋谷とか、原宿みたいな所での買物とか、動物園だとか遊園地だとか。

そして、映画だとか。


そういうこのくらいの歳の2人が行きそうな所を全て外している。

そもそも、最初が焼肉食べ放題での会話劇みたいな青春小説は初めて読んだw

スイーツのパラダイスはJKっぽいけどね。


でも、とにかく肉が食べたいって気持ちは誰にでもあるものだ。

肉を食いたい衝動を解決するには、肉を食べるしかない。


その焼肉中の会話も面白い。


『火葬は嫌なの。皆に食べてもらうとか無理なのかな』という桜良の言葉に

『肉を食べながら、死体解体の話はやめにしよう』と彼は言う。


そして、桜良は笑う。


僕が特にオススメなのが、この作品の丁度中間部分にある。

とある県への旅行だ。駅の長いエスカレーターを降りると

ラーメンの香りがするあの県だ。


この旅行の道中がとにかく面白い。

まず、『明日空いてる?どうせ、空いてるよね?』という桜良のメールで

見事に空いていると言ってしまった彼は、駅で翌日待ち合わせをする。


私服に空色のリュックと麦わら帽子を被った彼女に

何か嫌なモノを察知したのか、何処へいくつもりなの??

と聞く。


桜良は笑みを浮かべる。


桜良に『朝ご飯食べた?』と聞かれた彼は簡単にしか食べてないと答える。

すると、桜良は駅のホームの駅弁売り場で弁当を買おうとする。


嫌な予感がMAXに達した彼は桜良に

『ちょっと、待って!何処いくつもりなの?日帰り??』


桜良はまた笑い、そして『泊まりだよ』と答える。


結局、草舟である彼は新幹線に乗り、その県へ向かう。


彼は本文中でこれは、旅行ではなく、拉致だと言っていたが

そこも笑える。そして、凄く微笑ましい。


ああだこうだの会話の攻防戦をしながら、

桜良は雑誌、彼は文庫本を取り出す。


いつの間にか、お互い、一人の世界に没頭し始めるが、

気がつくと桜良は眠ってしまっていた。


その県でもある、終着駅に着いても彼女は起きなかった。


というと、この本のメインテーマである膵臓の病気の女の子なので

ここで亡くなってしまったかと思うが、実は本当に爆睡しているだけだった。


ここからの展開が笑える。

ほっぺをつねり、鼻を塞いでも起きない桜良に

最終手段として、輪ゴムで思い切り、腕なのかをパッチンする。

(顔かもしれないがw)


飛び起きた桜良は『もっと、名前呼ぶとかあるでしょ!!!』と彼の肩を殴る。


とても笑った部分だ。ここまで来ると彼は人工知能なんじゃないかというくらいw

超ロボット的思考を持っており、超人間的な桜良との対比が更に面白くなる。


そのラーメンの香りがする県で、学問の神様へのお参りやもつ鍋

(ここで桜良は白ワインを頼んでベロベロになるw)

を堪能した後、その日、泊まるホテルに行くのだが、実はここでも面白い事が起こる。


彼はロビーのソファーに座り、桜良はカウンターで受付を

するのだが、その受付をしている桜良の様子を彼目線である種、その動作だけで

内容を理解しようとする言わば、サイレントな会話劇が繰り広げられる。


受付のカウンターで用紙を記入し、それをホテルマンに渡す、

それを受け取り、PCへ入力すると、ホテルマンが意味深な顔をする。

それを受け、桜良はリュックから紙を出し、ホテルマンに渡す。


それを受け取るホテルマンは一旦、裏へ下がり、年配のホテルマンと

一緒に桜良に頭を下げる。


その様子を見ている彼。会話は一切聞こえてこない。


彼が本文でも言ってる様に、この時点で予測出来るのは、予約したんだけど

実は予約が取れてなくて、申し訳ありません。という展開だろうというのが

ほとんどの人が思う所だと思う。


しかし、桜良は困りながらも少し嬉しそうに笑っているのだ。


そこに彼は予約が出来てないって事ではないのか??と疑問を抱く。

ホテルマンが桜良に何かを打診している。


それを聞き、彼女は困った顔で笑いながら、彼を見る。

彼はその姿を見て、大きく頷く。


すると、今度は、そのホテルマンと年配のホテルマンは

大きくお礼をし、なんだか、話がまとまった様な空気感になる。


桜良が受付をすまし、彼の元に戻ってくると一言。


『予約していた所、いっぱいになっちゃったんだって。

でね、もっと大きな部屋を用意してくれるんだって。』


彼は「それは良かったね」と答えるが、

桜良は一つだけ鍵を出して、『一緒の部屋なんだけどいい??』


彼は「・・・・・・・は?」


つまり、彼が彼女に大きく頷いたというのは、一緒の部屋でも

俺は大丈夫だよ!と同意した勘違いであり、彼自体もあの時、大きく頷いた

自分を数分後の自分は殴ってやりたいと話している。


実際は更に細かい描写であったが、とにかくこの辺りは見事というか、

感動すら覚えた。


これは映像化になるよ。

三谷幸喜も真っ青なまさにコメディーと言ってもいい描写だろう。


いくつか、抜粋して書いたが、これ以外にもとにかく、この二人の会話は面白い。

それがあるからこそ、『君の膵臓をたべたい』その本当の意味はより涙を誘う事になるのだが。


<<シリアスな展開を挟んでいく〜そして、後編へ>>


基本はポップな展開で進んでいく物語だが、

勿論、病魔は確実に桜良を虫喰んでいく。


医学の進歩で一件、膵臓を病んで1年後には死ぬとは思えない

桜良だが、確実にその日が近づいてきているのを僕ら読者も

考えながら読み進めていく。


ハッとさせられる部分が主に2回出てきており、一つは衝撃の展開である

後半部分(次のブログで詳しくは話そう)そして、もう一つ出てくる。


県内でも、有名な高級ホテルに泊まる事になった2人だが、

そのハッとするシーンは桜良がジャグジー風呂に入っている時に起こる。


『仲良し君〜!私のリュックから洗顔クリーム取ってくれる〜?』

という桜良の声に彼はリュックを開ける。


彼は絶句する。


そこには、注射器とおびただしい数の錠剤、そして、使い方の

分からない医療器具が入っていた。


そこで彼は現実を叩き付けられる。

そうだった。彼女は死ぬんだ。


心の何処かに、彼女に振り回されてる自分を

楽しいと思いつつある彼は現実を知る。


彼女は死んでしまう。


彼は心の中から出てきた化け物に食われそうになり、

ベッドに横になる。


日常がキラキラしているだけに、この現実の影もその分大きい。

こういう描写がこの本にはたびたび出てくる。


最後まで読むと、それこそがこの作品の本質であると僕は思ったのだが、

その時の彼は何を思ったのだろう。


本来であれば、クラスで3番目に可愛いJKの女の子と2人でお泊りをする

という宝くじが当たったぐらいのレベルな出来事が起こってるのに、

彼はただただ、ベッドに倒れ、天井を見上げ、言葉にできない思いと

心の底からすりあがってくる化け物と闘っていた。


ちなみにこの後、彼は寝てしまい、その後、彼自体も風呂に入り上がると

既に梅酒を飲んで、酔っ払い始めている桜良がいるのは見所だw


そして、桜良が提案したゲーム「真実と挑戦」を行う2人。

その事から、いよいよ後半での展開。そして、衝撃の結末。

僕がこの作品で感じた余韻の本質を書こう。


物語は佳境に入っていく。

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